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【2024年7月最新】ケアマネジャーの業務範囲とは

コラム

2024年07月09日

2024年6月24日に厚生労働省にて第3回ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会が開催されました。その中の論点の一つとして、「ケアマネジャーの業務の在り方について」が議論されました。

今回は過去の検討会の内容も踏まえて、2024年以降ケアマネジャーの業務範囲がどうなっていくのかをみていきたいと思います。過去の検討会では以下のような意見が出ておりました。

  • ケアマネジャーには、利用者や家族から幅広く相談や依頼が寄せられており、多様な生活相談を地域で誰が受け止めるのかという問題が浮上している。ケアマネジャーの役割の明確化とともに、ケアマネジャーが事実上担っているものを他の専門職と連携しながら、どのように分担していくかという視点が必要。

  • 居宅介護支援を超えた業務に対する対価について、利用者への負担を強いるだけでは低所得者が置き去りになるため保険者の役割も含めた検討が必要。
  • ケアマネジャーは、運営基準に基づき、間接支援を行う者として、つなぐ・調整するなど相談支援に注力できるよう、直接的な金銭の取扱いや、入退院の自費で行うことができるサービスについては極力避けることが重要。
  • ケアマネジャーの業務外には、金融機関手続、ごみ出しなどが指摘されており、対応を検討していくべき。特に、介護保険サービス契約時には、利用者の方にもケアマネジャーの業務内容を理解していただくことも必要。
  • 従来は想定されていなかった業務に対する評価が必要

  • 主任ケアマネジャーは、個々のケースから見えてくる問題を普遍化し、地域全体の視点で社会資源の不足や機能不全の改善策を提案する役割があります。また、事業所を超えた人材を育成、ケアプランの点検などを担当し、スーパービジョンの視点で指導・育成の役割も果たします。
  • 主任ケアマネジャーについて、地域包括支援センターで求められることと居宅介護支援事業所に求められることは異なるため、制度的位置付けを明確化していくことが必要。
  • 主任ケアマネジャーについて、事務的な管理業務に時間を費やし、現場のケアマネジャーの指導が十分にできない状況がある。組織の管理業務は必ずしも専門職としてのスキルではないため、管理業務は別の形で整理が必要。
  • 地域包括支援センターは、個々のケアマネジャーのサポートやネットワークづくりに注力すべきであるが、介護予防プランの負担感が非常に大きい。
  • 主任ケアマネジャーの役割が適切に発揮されるよう、地域での活動ができる仕組みをどのように作っていくのかが課題。
  • 対人的な援助ではない、事務業務や管理業務については切り分けや生産性の向上が不可欠。

ケアマネジャーと主任ケアマネジャーそれぞれの業務範囲についての意見が述べられています。

現場のケアマネジャーとしては、身寄りがなく、金銭的にも困窮しているご利用者様の場合、介護保険等公的支援では対応が出来ない部分があります。この場合、誰も対応できないのであれば、ケアマネジャーを含めたケアチームで対応することも仕方ないと感じております。

もちろん、ケアマネジャーの業務範囲を理解した上で、ご本人様やご家族様が出来ること等をお願いしていくことも重要です。公的支援が受けられる際には、公的支援にご依頼する等を行ったうえで、それでも対応が困難な場合には管理者等に相談し、対応することが求められます。中にはご本人様や公的支援で対応可能なことでも、ケアマネジャーが対応してしまっているようなケースも見られます。

そのようなことがないように、基本に立ち戻り、運営基準、解釈通知、契約書、重要事項説明書等の記載事項を読み込み、ケアマネジャー業務を理解することが必要となります。

「何でもやってあげる」ケアマネジャーではなく、下記のように介護保険法に明記されているケアマネジャーの専門性を理解してマネジメントすることが重要です。

第七条 1~4(略):この法律において「介護支援専門員」とは、要介護者又は要支援者からの相談に応じ、要介護者等がその心身の状況等に応じ適切なサービス等を利用できるよう、その他サービス事業者との連絡調整を行う者である。また要介護者等が自立した日常生活を営むのに必要な援助に関する専門的知識及び技術を有するものとして、第六十九条の七第一項の介護支援専門員証の交付を受けたものをいう。
第八条 1~23(略):この法律において「居宅介護支援」とは、居宅要介護者が居宅において日常生活を営むために必要なサービスの適切な利用等をすることができるよう、厚生労働省令で定める事項を含めた計画をもとに、連絡調整やその他の便宜の提供を行うことをいう。
第六十九条の三十四:介護支援専門員は、要介護者等の人格を尊重し、その立場に立って、公正かつ誠実に業務を行い、提供される各種サービスが特定の種類や事業者に偏らないようにする義務があります。
第六十九条の三十四の2:介護支援専門員は、厚生労働省令で定める基準に従って業務を行う義務があります。
第六十九条の三十四の3:介護支援専門員は、要介護者等が自立した日常生活を営むのに必要な援助に関する専門的知識及び技術の水準を向上させ、その他の資質の向上を図るよう努める義務があります。
第百十三条の三:介護支援専門員実務研修受講試験は、介護支援専門員の業務に関する基礎的知識及び技術を有することを確認する目的で行われます。これには介護保険制度、要介護認定及び要支援認定、各種サービス計画、保健医療サービス及び福祉サービスに関する基礎的知識及び技術が含まれます。
(読みやすさの観点より編集、要約しております。詳細に関してはこちらよりご確認くださいませ。)

また検討会の中では以下のような論点も定められ、議論が行われました。

  1. 高齢者が抱える課題が多様化、複雑化してきている中、ケアマネジャーを含めた地域全体で要介護者等を支えていくことが重要である。その中において、ケアマネジャーが地域の中で担うべき役割や業務とはどのようなものが考えられるか。
  2. 1を踏まえて、ケアマネジャーの業務範囲外と考えられる業務は具体的にどのようなものが考えられるか。また、その業務はケアマネジャー全てに当てはまるものか。
  3. 2により、業務範囲外とされた当該業務については、誰が、どのように対応し、その費用をどのように負担又は分担することが適切と考えられるか。

非常に難しい論点ですが、業務範囲をある程度定めないとご利用者様、ご家族様、関係事業者、保険者様それぞれにとって共通理解ができず、業務範囲が徐々に膨大になってしまうため、線引きは必要かと考えられます。

以下、第3回ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会の参考資料より引用しております。

〇支援拒否がある利用者の給付開始前の関係構築等
〇郵便・宅配便の受取・投函
〇金融機関やその他各種機関の手続きや申請の代行・支援
〇入院・入所時の身元保証
〇介護保険制度以外の行政への手続きや申請の代行・支援   
〇入院・通院時の付き添い・送迎
〇入院中・入所中の着替えや必需品の調達         
〇家族介護者本人に対する相談対応、情報提供 
〇入退院にかかる手続きや申請、支払いの代行・支援     
〇徘徊時の捜索・捜索依頼の対応
〇サービス調整等に関わらない電話等への対応、時間外相談  
〇災害時の警戒呼びかけ、避難支援、安否確認
〇利用者と家族介護者以外の家族、親族、知人等との意見調整 
〇郵便・宅配便の受取・投函
〇死後事務
〇土地や住宅、相続に関する手続きや申請の代行・支援  
〇財産管理
〇モニタリングや定期の安否確認を除く緊急訪問         
〇利用者のペットに関わる支援
〇雪かき、除雪等、天候不良時の支援代読、代筆   
〇部屋の片づけ・ゴミ出し、買い物などの家事支援

等、ケアマネジャーの業務範囲外と思われることについて列挙されていますが、この研究調査の結果を見ると全ての項目に対して、少なからず対応したことがあると答えているケアマネジャーがいることです。

必要に応じて仕方なく行わなければならない部分はありますが、中には業務範囲外以上にやってはいけないことも含まれているように感じます。

〇金融機関やその他各種機関の手続きや申請の代行・支援
〇入院・入所時の身元保証

〇生活費等、日常的な預貯金の引き出し・振込代行
〇死後事務

〇土地や住宅、相続に関する手続きや申請の代行・支援
〇財産管理

これらのことについては、金銭に関わってしまうため、トラブルになるリスクも高く、地域包括支援センターや社会福祉協議会等が行っている日常生活自立支援事業等で対応できる可能性もあります。

これら一つ一つを精査し、少しでも安心してケアマネジャー業務が行えるように環境整備が進むといいと思います。